先々月の話ですが
裏稼業のお客さんでその先々月まで担当していた、K社の設計Mr Makiyamaが逝去されました。
享年55歳でした。
つい5月まで、18年間担当させてもらったK社さんの、設計ブレーンの一人でもあり、主要製品の要の設計担当でもありました。
氏から沢山仕事を頂き、うちの会社にとっても、また個人的にもとても貴重な経験をさせて頂いた恩人でもありました。
K社の電子ピアノ新製品に載せる、鍵盤ユニットをイタリアのFatar社に委託する際に、うちの会社の部品を指定して頂き、その量産前の工場立会いで同行出張までさせて頂いたのです。
イタリアはおろか、欧州に行くなんてそうそう経験もできないのに、氏が取引としてもイタリア出張にしてもまたとない経験をさせて頂きました。
イタリアの工業製品の場合は、日本のそれとは違うシステムで、それは日本のように各部品毎に得意とする加工業者の分業制ではなく、取り込める加工はほぼ自社内で加工するというもの。
イタリアに限らず、欧州の労働習慣は、それもまた日本と違いほぼほぼ定時内に仕事を仕上げる。ちゃんと昼休みも2時間、夕食時は長くて3時間、よほどの緊急でない限りは定時内に。
そのため、昼休み中はどんな商店でも公共機関でもきっちり1時間は休む。
自国(自社)の製品には、どの企業も各自の技術に確固たる誇りを持っていること。
日本とはまるで別世界のように感じ、これだけ習慣が違っていても国の経済はまわっているのだな・・・という感心が大きかったです。
そんな世界を目の当たりにできたのも、氏のおかげです。
氏も少しイタリア語を勉強していたと聞いて、私も帰国後にイタリア語講座の本を買ってほんの少しだけ勉強しましたが、挫折しました。
氏以外にも、K社の方々とは公私ともに懇意にさせて頂きました。
担当を離れた今も、お付き合いをさせて頂いております。
それも、きっと氏がこのようなきっかけを作って頂いたからこそ、ここまでお付き合いさせて頂いているのだなとも思います。
数年前から、なんだかほっそりとした氏。
聞くと
「ダイエットしてるんです。
ひと駅手前で降りて歩いたり、夜は晩酌のビールをやめて・・・」
実はその頃から病んでいたようで、取引先には一切公言していなかったようです。
私もてっきりダイエットしているものだとばかり思っていました。
そのうち、マネージャー職まで自ら降板され
「もう役職定年が近いので・・・」
それも実は、病のことがあって降りたそうです。
それ以降、一線に出ることも、我々出入り業者との打合せも減ったようで、それは通院したり入院したりが続くのがわかっていたからだそうです。
私が担当を離れる3か月前、後任引継の挨拶でチラッとだけ挨拶したのが最後でした。
その時は、もう顔色もすぐれてなくて、さらに痩せほそっていました。
そして、6月に入り休職に入ったと聞き、その後すぐだったと思います。
氏の訃報を、元部下で氏の後を引き継いだマネージャーから携帯に電話を頂きました。
担当を離れたのに、何で私に電話をかけてくるのだろう?
その直後、嫌な予感がよぎりそれが適中しました。
「氏は、昨晩・・・」
病という設計ミスだけは、対処できなかったようです。
そして、お通夜に参列しました。
業者の中で一番最初に席につき、同行した上司と一緒に最前列に並びました。
遺影は、元気なころの氏の姿です。
もう遺影でしか元気な顔が見られないのか・・・
と思った瞬間、愕然とし大きなため息をつきました。
それから、涙が止まりませんでした。
帰りの車の中でも、ずっと泣いていました。
もっと頑張ってほしかったし、もっと仕事をさせてもらいたかった。
いつも会う度、柔和な笑顔で迎えてくれたMr.Makiyama。
イタリアの話や、好きな料理の話になると目がキラキラしていたMr.Makiyama。
イタリア以外の、ビジネスのビッグチャンスをあたえてくれたにも関わらず、期待に応えられなくてすみませんでした。Mr.Makiyama。それは今でも後悔しています。
2年前に、大クレームを起こしてしまった時も、淡々と冷静に対応してくれたMr,Makiyama。
氏の亡きあと、不思議なことが2つありました。
通夜の参列の際、前述の通り一番最初に席につき、その隣に氏の後任のマネージャー、その隣にうちが一番お世話になっている設計グループの元マネージャー。
ちょうどその2部署がお世話になっていて、それぞれのトップが私の隣に並んでいた。
氏がきっと並ばせてくれたのでしょうね。
今の裏稼業の私の任務は、新規開拓1本。
商談もままならない状態だったのに、その後になって某大手電機メーカーの子会社といきなり取引開始、口座開設。
どう考えても、そんな急に仕事が舞い込んでくることなんてめったにないのに、これもきっと氏のおかげなのかな。いや、きっとそうだろう。
天国にいってゆっくり休んでくれればいいのに、そんなことまで私達に気を留めてくださるのも、氏らしいです。
そんな氏だからこそ、沢山の方々に慕われ、沢山の方々に見送られて天国にいかれたのでしょう。
あなたの優しさや強さ、柔軟な発想、決して忘れることはないでしょう。
今まで本当にありがとうございました。
安らかに。
私がそちらに行ったときは、お手製の料理を食べさせてくださいね。
あ、でも火力を上げ過ぎて天井を焦がさないようにしてくださいね。

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